「先生、試験で電卓(計算機)は使えないんですか?」
EJU(日本留学試験)の数学を勉強し始めたばかりの学生から、ときどきこんな質問を受けます。
実は、EJUの試験中に計算機を使うことは許されていません。EJUに限らず、日本では学校や公的な試験の多くで計算機を使うことができません。どんなに複雑な計算も、自分の手で速く正確に解き進めなければなりません。計算機が当たり前の国から来た学生にとって、これは単なるルールの違いではなく、非常に高い「壁」となります。
今回は、30年以上日本の教育現場で理数系科目を指導してきた私の視点から、EJU数学における「計算力」の本質的な重要性と、具体的なトレーニング法をお伝えします。
日本の数学教育が求めるもの – 「論理力」と「計算力」
国によって、数学の試験で求められている力は少し異なります。
世界には、試験中に計算機の使用が認められている国も多くあります。そうした環境で学んできた留学生にとっては、「なぜ日本では計算機を使えないのか?」と疑問に感じることもあるでしょう。
しかし、ここには単なるルールの違いではなく、「試験で何を評価するか」という明確な考え方の違いがあります。
「論理力」のみを測るか、「計算力」も含めて測るか
計算機の使用が許されている試験では、主に試されているのは「論理力」です。
- どの公式を使うか
- どのように解法を組み立てるか
といった「考え方」の部分に重点が置かれます。
一方、計算機の使用が許されていない試験では、「論理力」に加えて、正確でスピーディーな「計算力」が試されます。
EJUを含め、日本のあらゆる数学試験では、計算機の使用が許されていません。
日本においては、計算力は単なる「補助作業」ではなく、明確な「実力の一部」なのです。
マーク式試験の恐ろしさ
EJUで「計算力」が求められる理由が、もう一つあります。
それはEJUがマーク式試験であるということです。
記述式の試験であれば、途中の考え方が正しければ部分点が与えられることもあります。
しかし、マーク式に部分点は存在しません。
たとえ正しい論理で解いても、最後の計算を一つ間違えただけで、その一問は0点になります。別な言い方をすれば、「解き方が分かっているのに最後に計算ミスをして失点」しても「全然わからなくて失点」しても、テストの上では同じなのです。
両輪がそろって初めて「得点」になる
つまり、EJU対策においては、
- 正しい考え方ができること(論理力)
- 制限時間内に正確に計算すること(計算力)
この2つを鍛えなければなりません。
どれだけ解き方がわかっていても、計算で止まったり、ミスをしたりすれば、答えにはたどり着けません。
計算力は単なる作業ではなく、合格を左右する「得点力」そのものなのです。
「計算ミス」は「ケアレスミス」ではない
「ミス」を「不運」で片付けない
計算間違いをしたときに「ケアレスミス(不注意による小さなミス)だから次は大丈夫」と考えてしまう学生がいます。
しかし、計算ミスをそのように片付けているうちは、ミスがなくなることはありません。
計算ミスは「運の悪さ」ではありません。
それが、今のあなたの「実力」なのです。
すべてのミスには原因がある
「たまたま」起きたように見えるミスも、実は必然的に起きています。
- 集中力が足りなかったのか
- 基礎的な計算速度が追いついていなかったのか
- 自分の書いた数字を読み間違えるほど、書き方が雑だったのか
こうした要因があれば、ミスは起こるべくして起こります。もちろん、人間がミスをゼロにすることはできません。
しかし、自分のミスを分析し、正しいトレーニングを続ければ、ミスを極限まで減らすことはできます。
「わかっていたのに……」という悔しさを本番で味わわないために。
計算力を「単なる補助」ではなく、合格を支える「実力の柱」として、徹底的に磨き上げていきましょう。
試験中の計算ミスを減らす方法
では、どうすれば試験中の計算ミスを減らすことができるのでしょうか。
ここでは、今日から実践できる3つのポイントを紹介します。
(1) 毎日の計算練習を習慣にする
まず一番大切なのは、計算そのものに慣れることです。
難しい問題を解く必要はありません。むしろ、基礎的な計算を速く・正確にできることのほうが重要です。
- 簡単な四則計算
- 分数や小数の計算
- 文字式の整理
こうした基本的な計算を、毎日少しずつでいいので繰り返してください。
ポイントは2つです。
- 毎日やること(5〜10分でもOK)
- 必ず時間を測ること
時間を意識することで、「試験で使える計算力」が身についていきます。
(2) 計算の「書き方」を見直す
試験中は、問題用紙の余白に計算を書くことになります。
ここでありがちなのが、計算が雑になってしまうことです。
- 数字が読みにくい
- 符号(+・−)を見間違える
- どこまで計算したかわからなくなる
こうした状態では、ミスが起きるのは当然です。
落書きのような書き方は避けましょう。
とはいえ、ノートのようにきれいに書く必要はありません。大切なのは、
- 自分が見てすぐに理解できること
- 見直したときに追えること
この2つです。
(3) 数字の感覚(概数感覚)を身につける
もう一つ重要なのが、「数字の感覚」です。
自分で導いた結果を見て、
「この値、大きすぎないか?」
「だいたいこれくらいになるはずでは?」
と感じられることはとても大切です。
この感覚があるだけで、ミスに気づける確率は大きく上がります。
EJUはマーク式のため、計算結果をそのまま選択肢に当てはめてしまいがちです。
そのときに、値の大きさに対する違和感を持てるかどうかが重要になります。
まとめ
EJU数学において、計算力は単なる作業ではありません。あなたの「論理」を確実に点数へ結びつけるための最後のピースです。
記述式と違い、一箇所のミスも許されないマーク式試験。その厳しさを突破するには、ミスを「不運」で片付けず、自分の弱点と向き合う強さが必要です。
- 計算ミスを「実力不足」と認め、原因を分析すること。
- 日々の数分を惜しまず、計算の土台を積み上げること。
その一歩が、本番での揺るぎない自信に変わります。「解き方はわかるのに点が取れない」と悩む時間はもう終わりです。今日から、安定して得点できる「本物の計算力」を共に養っていきましょう。
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